2001年6月8日
ジェフリー・パーカー『西洋の戦争の様式』要点メモ  My


西洋の戦争の歴史的な特質
1 技術導入に対するどん欲さ
西洋社会は軍事技術の受容、開発に極めて熱心で、その軍隊が外敵に対して戦闘能力で劣ったことはほとんど無い。
2 高度の規律
西洋社会では兵士に規律を与えて強力な戦闘隊形を作り上げることが伝統的に重視された。西洋の軍事力は侵略する場合も攻撃を受ける場合も、ほとんど常に敵より数で劣ったが、高度の規律によりその不利を補った。
3 軍事的な知的遺産の継承
西洋社会では自由な学問的環境下で、古代より軍事的な研究が活発になされ、その成果が絶えることなく受け継がれてきた。

 以上の三つの特質は中国や日本でも見られるが、西洋はこれらの文化圏とも決定的に異なる二つの特質を持つ。

4 諸国家の競合による富国強兵の促進
西洋社会は単一の覇権勢力が出現せず、多数の政治組織が併存・抗争したため、軍事技術や、軍事力を維持するための社会制度が著しく発展した。
5 高い財政能力
銀行券や国債を発行して、多額の資金を戦争に注ぎ込むことができた。そして国家の債務を返済するだけの能力、およびその意思を、国民が有していた。 

 非西洋の国でも、日本は、これらのうち、前三者に加えて、高度な財政構造も備えており、16世紀と19世紀に西洋式の戦争に適応して、遅れをとらなかった。


西洋の覇権の主要因としての軍事力
 西洋の台頭に際しては、その経済的な能力よりも、軍事的な能力が中心的な役割を果たした。
 1650年までに西洋は、南北アメリカ大陸、シベリア、アフリカ南部の沿海地域、フィリピンの大部分を軍事的に支配。1800年までに西洋諸国の支配は世界の地表の35%、1914年には85%におよぶ。その後西洋諸国の直接支配する領域は激減したが、現代でもその軍事力は世界中に様々な干渉を行い、自分たちの経済的利益と好ましい勢力バランスを守っている。


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