2002年5月31日
西洋軍事史文献紹介  My


 最初は、軍事史をかじってみようという人に個人的にお薦めする本を、上位から3冊、値段や絶版・品切れといった事情を無視して、紹介します。
@マイケル・ハワード『ヨーロッパ史と戦争』学陽書房
 中世から現代に至る西洋軍事史を概説。分量は多くなく、しかも非常に質が高い。
@伊藤政之助『世界戦争史』原書房
 古代から19世紀までの西洋の戦争史。全10巻におよぶ。著者は英雄崇拝の傾向が強いが、他に文献が手に入らないような戦争まで扱ってくれているので、非常に役に立つ。最終巻には手短に軍隊の発達史をまとめた部分がある。
Aアーサー・フェリル『戦争の起源』河出書房新社
 石器時代からアレクサンドロスまでの西洋古代の軍事史を概説。分量的に多くなく、そのうえ質が高い。そしてなにより非常に読みやすい。@と合わせて読めば西洋軍事史の知識が一通り手に入ります。



以下、文庫新書で入手できそうなものからお薦めの本を挙げる。
 軍事史の本はもともとあまり多くはなく、しかも文庫新書に限定するとなればごくわずかしか思いつかない。石原完爾『最終戦争論・戦争史大観』(中公文庫)。これは政治思想書であるが、軍事史の通史として読むことも可能で、範囲は近世から二次大戦頃まで。菊池良生『傭兵の二千年史』(講談社現代新書)は古代ギリシアからフランス革命あたりまでを扱う。渡部昇一『ドイツ参謀本部』(中公文庫)は17世紀後半以降、二次大戦のあたりまで。これら3冊は読みやすく良質。松村劭『戦争学』(文春新書)はそれほど良い本とは思えないものの、古代ギリシアから現代まで一通り扱ってくれており、読んで損はないと思う。



 最後に一言、クラウゼヴィッツ『戦争論』(岩波文庫)やジョミニ『戦争概論』(中公文庫)のような軍事思想書は、十分な知識と読解力が身に付くまでは読まないほうが良いと思います。


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