2005年2月11日(2005年12月18日改訂)
レジュメの作り方講座・資料集め編 Ver.2  貫名


 2年ほど前に資料調べの方法を書いたら評判だったので調子に乗って第2版です。
 レジュメを書くときの資料の探し方についてまとめてみました。初めてのレジュメ作りから、学術論文作りの資料編まで対応できるようなテキストを目指していますが、書き手本人は学術論文を書いたことがないので後者にどこまで対応できるかは不明です。

 一回生の方にはなんかややこしい話まで書いてますし、逆に心構えとか一般論については他の誰かにお任せします。
 なお、実際に操作して貰わないと分からない面がありますので、口頭発表はほとんど省略させてもらいますね。

1. 資料の種類

 レジュメに使う資料と言っても、色々な種類があります。これらを一概に分類するのは不可能なのですが、取り敢えず大雑把に思いつく範囲で分類してみました。分類すること自体にはあまり意味はありませんが、資料と言ってもこのようなものがあるのだなぁと頭に入れておくと便利かと思います。

1.1. 一般書
 本屋さんで素人さんに読んでもらうための本。一般的に分かりやすくコンパクトに書かれていることが多いです。また、写真や図が豊富に使われていることも多く、イメージを掴むにはもっとも好適でしょう。「図解なんとか」とかその手の本は、発表の時に持ってきたりレジュメの付録にコピーしたりすると説明の時に非常に助かります。
 反面、一般書の中にはかなり掘り込みが浅いものや、読者におもしろおかしく興味を惹くようなところにばかり強調して書いている本も多々あります。

 ただ、この一般書と学術書に線を引くのは実は結構困難です。一般向けの新書の中には下手な学術書真っ青の学問的に優れた本もありますし、歴研でも名著としてよく名の挙がる宮崎市定「中国史」も一般人向けに書かれたものだと考えていいです。真の良書は学術書だろうと何だろうと一般人が読んでも面白いと思うのですが。

 その意味ではこの分類にあまり意味はないのですが、反面明らかに学術的には大したことない一般向けの本もあるので節を一つ立てておきました。

1.2. 体系書・教科書
 例えば前述の「中国史」とか、もう少し分厚くなると「日本の歴史」全○○巻とか、そういう「特定のジャンル・時代に焦点を当てずに通観した本」です。「日本法制史」とかになると学術書との中間になるかもしれません。あるいは山川出版社の高校日本史Bの教科書とかも立派なこのジャンルだと思います。
 特に細かいテーマをやろうとすると枝葉末節ばかりを追ってしまい何となくこういう基本の本はおろそかになりがちになるのですが、扱う時代だけでも取り敢えず通読しておくことをお勧めします(通史をやるのなら……まぁ、全20巻以上とかじゃないなるべくコンパクトに集めた本を探してください^^;)。知識を一から得ると言うよりは、何となく分かっているつもりの自分の知識の穴を埋めるために。

1.3. 辞典・事典
 説明は要らないと思いますが、百科事典とか用語事典とか、あるいは国語辞典とか。ブリタニカとか平凡社世界大百科事典とかの他に、国史大事典だとかキリスト教大辞典だとかジャンル別の辞典もあります。
 私は実はあまり使えてないのですが、特にレジュメレベルではこれを上手く使えると技術がすごく上がると思います。普通レジュメを作るのにいちいち細かいことを調べてられないわけで、枝葉末節は事典で簡単に事実を確認して大事なところをきっちり調べるのが上手な作り方でしょう。もしくは前述の体系書と重なりますが、いちばん基本となるべき知識を確実に押さえるのにも便利です。

1.4. 学術書

 そのままですね。学者さんその他が自分の研究分野についてまとめた本。一般的に突っ込んだ内容について細かい分析が為されています。深く知識を得るには不可欠な本ですし、凝ったレジュメを作ろうとするとこれが中心になる可能性が高いと思います。
 反面、このような本ばかり読んでいると木を見て森を見ずのようなことになりかねません。また、時々ものすごく分厚い学術書がありますが、最初のうちはそこまで使いこなせなくても大丈夫だと思います。

 一般書で書いたのと同じようにピンキリです。極端な物だとその分野の知識を持っていないと何を言っているかさっぱり分からなくなりますし、学術の最先端を一般人にも分かりやすいように、と書かれた本もあります。

1.5. ネット関係の資料
 最近はインターネットにも様々なページがあり、適当にキーワードを入れて検索すれば様々なページがヒットします。正直言えば、ジャンルによってはネットを漁るだけでそれなりに資料が集まってしまう場合もあります。
 こうしてネットで資料を探すのは簡単で、一見初心者向けに見えますが、実はかなり上級者向けの方法です。というのも、書籍に比べてネットの情報は本当に玉石混淆であり、どれが信頼できる情報なのかを自分で判断しなければならないからです。この能力が高ければネットの資料も便利なのですが、うっかりするともっともらしく書いてあるいい加減な情報を拾ってしまうことがあります。これは実際の体験です(汗)。

 ただ、実際ネットを使いこなせると便利なので、いくつかコツを。

@公的機関や研究機関の公式ページは割合使えます。
 こういうところに載せられているものは(少なくとも、出版媒体と同様には)信頼できると考えていいと思います。あるいは、大学教授の個人ページに載っているものもこれに準じて考えて良いと思います。例えば判例などの中には公刊物に掲載されず裁判所の公式ページにしかないものもありますし、中には専門の研究者の教授の個人ページにのみこっそり載っている判例もあります(判例は後述Aに該当しそうですが)。また、以前に神戸新聞の連載記事を資料として使ったことがあったのですが、これはネットに同じ物が掲載されていたのでそちらを資料として使いました。こういう「現地にしかなく入手困難な資料」を手に入れやすいのがネットの利点です。

 一方、個人ページのものは信頼できないことを前提にした方が良いと思います。それともう一つ、個人ページの場合、大筋に於いて出版物などを下敷きにしていることが多いです(逆に言えば、これが分かるように参考文献が書かれている資料は信頼性が高いと思って良いです)。

A資料的なページは使って構わないと思います。
 ここで「資料的」というのは、作者の主観が入らないデータとしてのコンテンツを指しています。過去の資料や統計資料などを電子データ化して掲載しているページは多々ありますし、これらの作成者の主観が入らない資料はレジュメ・論文に使っても大丈夫だと思います。写真とかも同様ですね。博物館のサイトでの所蔵品解説なども使えそうです。

B孫引きにはどんどん使いましょう。
 先ほどもちらっと書きましたが、ある程度信頼できるページならそのページかサイト内のどこかに参考文献が書いてあります。あるいはそこまで行かなくても、そのページを読むことで、自分がどの方面を調べればいいのかの指針が立てられる場合もあります。そういう「資料を探すための資料」としてネットは有益ですし、むしろそれがネットを使って資料を探す最大の用途だと考えています。

Cルポは……微妙?
 現代史を話題にする場合には、ルポやそれに類するものも役に立つことがありますが……特に個人調査の記事などをどう扱うべきかは私には自信がありません(少なくとも、使ったことはありません)。例えば「扱ったこれは現在どうなっているか」というような話題を調べるときには資料としていいのかな、とか。

Dあと当然ですが
 「一般にどう見られているか」というような話題の時には使って構わないかと。あと、そもそもネットやそれに限らずパソコンの話題が絡むときには使わないとどうしようもなく……まぁその辺は常識で判断ですb

EWikipedia
 ……えー私確か参考文献一覧に入れたことがあります(苦笑)
 ネット上での無料百科事典として有名なサイトですが、資料としてどこまで使えるかというと多少の疑問が残ります。何せ個人が自由に加筆して記事を作っていくタイプなので、間違いも決して少なくはありません(実際、私も何度か明らかな誤記を直したことがあります)。この点から言えばあまり使わない方がいいと思うのですが、ただ便利なのは確かですし、普通の百科事典でないような細かい項目やタイムリーな項目もありますし……ということで、簡単な説明を加える程度なら使って良いのかな、というのが結論。「信頼できるサイト」ではありませんが、参考にはなります。

F余談。
 わが京都大学歴史研究会も論文をウェブで公開しているのですが、この論文についてはどう扱うべきかは(もしくは、他の大学歴研や個人の論文をどうするかは)何とも微妙。歴研内部の人間としてはとっても信用できるテキストだと思ってますがw
 一般的には、中身を読んで信頼できるか出来ないかと判断するしかないと思います。使える情報であるという自信がなかったら使わないのが無難でしょう。歴研の論文でも(苦笑)

2.図書の探し方

 さて、では具体的な資料の探し方です。

2.1. 孫引き曾孫引き玄孫引き。

 当然ですがいちばん簡単なのは、一冊本を見つけてそこの参考文献や注釈に出てくる資料をどんどん探っていく方法です。……解説は要らないですね。
 そのために、資料探しの際には「とにかく新しい本」を探すのも一つの方法です。古い本にはそれより新しい研究成果の話は出てこないわけですから。
 短いですが他に書くこともないので次。

2.2.京都大学OPAC(http://kensaku.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/)

 まあここを知らない人はあまりいないと思いますが(苦笑)。単なる所蔵検索に 限らず、関連資料を検索する目的でも使えます。
 まずは普通にキーワードとか入れて検索するのは勿論ですが、それに加えて検索した後に「分類標目」「件名標目等」をクリックしてみるのがコツ。そのジャンルの書籍が(書名に関係なく)ずらっと出て来ますので、更に効率的に検索することが出来ます。この分類システムがちゃんと実装されているOPACはほとんどありませんので、私は京大で借りる予定がなくても使っていたり。

 ただ、注意しておいて欲しいのは、総合図書館はちゃんと全部データ化されてますが、他の各学部の図書館については古いものはほとんどデータになっていないこと。
 大雑把には平成以降のデータは大概入っていますが、それ以前に関しては現在徐々に遡及入力している最中のようです(本棚からごそっと抜いてきて一気に打ち込んだり、データ化されていない本が借りられたときは書架に戻す前に入力したり。以上は法学部図書館での体験です)。その分については図書館に行ってカード式の目録を使うしかありません。特に文学部図書館のカード目録はアルファベット順&著者別と書名別が一緒くたになっていて複雑で分かりにくいです……。
 参考までに書くと、文学部の場合で約40%とのこと。機械貸出がようやく去年の春に始まったというレベルなので遅れてるのかと思いきや、実は法学部とか農学部の方が遅れていたようです。

 ちなみに、雑誌は中国語とかハングル語の一部を除いて全て検索できます(中国の歴史雑誌については文学部にそれ専用の紙のファイルがあったはず)。附属図書館に鉄道ファンが創刊号から揃っているとかたまに訳の判らない所蔵があります(^^)

2.3. NACSIS Webcat(http://webcat.nii.ac.jp/)
 実はトップページにいかなくても京大OPACから飛べるんですが(苦笑)

 ここは全国の大学図書館その他の総合所蔵検索システムです。最初は日本の大学図書館中心だったようですが拡大してまして、都道県立図書館やら、気が付けば英国図書館とかオックスフォード大学とか挙げ句の果てには立正佼成会まで入っててぶっとびますw
 要するに、京大にない本でもこれを使えばどこの大学に所蔵しているか一発で分かるわけですね。どうしても読みたい資料がある場合にはこれで検索を。

2.4.普通の図書館OPACとか
 使用頻度の高そうなものをいくつか挙げてみます。

大阪府立図書館横断検索(http://www.library.pref.osaka.jp/cgi-bin/book.cgi)
 大阪府内の(大阪市立も含む)公共図書館、京都以外の近畿の府県立図書館、ついでに国会図書館に前述のNACSISまで入ってます。欲しい本さえ分かっていれば、私の知る範囲では実は最強。

京都府立図書館(http://www.library.pref.kyoto.jp/)
 ここも一応府内横断検索。ただし正直言って使い勝手が悪いです。
 バックボタンが使えないし、検索トップページへのリンクすら張れないし。
 私はここが役に立ったことはないです−−;

京都市図書館蔵書検索(http://www.kyotocitylib.jp/zousho/index.html)
 京都市立図書館は「中央図書館」と名の付く図書館が意外としょぼかったりしますが
 他の分館から取り寄せてもらったりすればかなり使えると思います。冊数はそこそこ。
 ちなみに京大近辺だと、東鞍馬口通り・川端通り少し東の左京図書館が便利ですね。
 もしくはカナート洛北の少し南と言った方が判りやすいのかな?

・余談ですが
 大阪府立図書館・大阪市立図書館は実は近畿圏在住なら問題なく貸し出しできます。この蔵書はかなり質が良く、大学図書館で見つからない学術書が転がってたりすることもしばしば。覚えておいて損はないかと。

2.5. 他大学からの取り寄せ
 他大学から取り寄せたりコピーをもらったりも出来ます。いわゆる相互利用。
 もしくは紹介状を書いてもらって向こうの大学図書館に行くことも可能です。一度だけ行ったことがあります(苦笑)。
 国会図書館から取り寄せて貰うことも出来ますので、日本で出版されてる本ならどうしても読みたければ何とかなりますと。そういう話。ただし、取り寄せは場合によっては断られたりするようですけどね……。

2.6.アナログな方法も。
 世の中には文献目録というものがありまして、ある分野についての(東洋史とか、そういう大きな単位で)文献を(書籍、論文両方について)細かい分野に分けて羅列したものがあります。例えば東洋史だと東洋學文獻類目というのが人文科学研究所から毎年発行されています。ネットがない頃はこういう物を使って探してたんですね。

 で、ネットがあるから今は使わないかというと実はそうでもありません。この手の文献目録というのは時代・ジャンル別に何でも網羅的に書いてあるわけでして、パソコンの検索でのタイトルによるピンポイントな手法では引っ掛からないような網羅的な調査が可能になります。
 ……ただまぁ、例えば法制史文献目録は1990年以降は目録自体がネットにアップされていたりしますし、他にもデータベースとして提供されている目録は少なくありません(……私が使ったことがないので細かく述べられませんが(汗))。将来的にこの文献目録自体が全て電子データ化されればいよいよ紙媒体での検索の需要は減りそうですが(というか、実際にこの手のものの作成は最新のものは大抵電子データに移行しているようです)、一応今のところはまだそこまでは至っていません。

 ここまで使うのはおそらく学術論文を書くときで、歴研レジュメですらここまでの作業をすることは少ないような気がしますが……。

3. 論文検索
 基本的には今まで書いた手法と変わらないのですが。

3.1. 国会図書館NDL-OPAC(http://opac.ndl.go.jp/index.html)

 おそらく論文を検索する上でいちばん便利なのがここ。ここの特色は、蔵書以外に、雑誌記事も検索できること。これが実はかなり強力で、主な学術論文はほとんど検索できてしまいます。
 使い方はだいたい見れば分かると思いますが、OPACのトップページから、右から上から3番目の「雑誌記事索引の検索/申込み」を選択。あとは必要な項目を選べばOK。

 これで雑誌の目星を付ければ、あとは2と同じ手法で雑誌を検索ですb
 ちなみに私は、論文を調べるときは大抵、国会図書館と大学図書館のページの両方のウィンドウを開いておいて、切り替えながらやってます。もしくはメモ帳に取り敢えずコピペして一遍に検索するか。

3.2.その他論文を探せる場所

・東洋史について、東洋史文献類目(http://www.kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/db/CHINA3/)
法制史学会(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jalha/)。文献データベースあります。

 特定のジャンルにおける目録は最近はあちこちで出来ていますし、これからも増えていくとは思います。
 この手の目録は国会図書館で記事検索に収録してもらえない細かい雑誌もちゃんと追ってますし、東洋史文献類目だと海外
の論文もだいたい押さえてます。自分の調べたいジャンルでこれが出来ていればもうけものですね。後も増えていくと思うのです。  ネット関係はどんどん展開してるので今は過渡期ですね。

4. 図書館のあるきかた。

4.1.京大図書館
 やっぱり最後は自分の足。でもここからの解説は1回生用かもしれないw

 基本的に、京大の学生証があればほとんどの京大関連施設で閲覧・貸出の利用が出来ます。
 (本館・総人・法・経・文・教・理・医短・建築・人文研・経済研究所・経済学部資料室……あちこち行ったなぁ)
 そのうち、総合図書館の書庫は、学生証を見せればバッチをくれて中に入れます。電動書架は初めて見ると結構感動できるかも。総人図書館も同じように学生なら誰でも入れるようになったそうです。(2005年10月1日から全学部生が入室可能だそうです。それまでは学部4回以上に制限されてました)。
 他の学部図書館はそれぞれの規程があります。文学部図書館の場合は文学部生は(卒業生も含めて)自由に入れますが、法学部の場合は学部学生は教授のサインをもらって閲覧証を申請しないと駄目、経済学部の場合は学部生は利用不可、となってたりします(実は法学部と経済学部の書庫は繋がってるというか一続きなので法学部の学部生は入れたりしますがw)。
 書庫に入れない場合はカウンタで頼んで持ってきてもらうことになります。研究所とかの図書館に行くとそもそも開架図書がないこともあります(……学生があまり近寄りそうになくて緊張しますw)。

4.2. 京都市立図書館
 京都市立図書館は「中央」と名の付く3ヶ所の他に地域館が凄まじく多く、全部入れると20ヶ所ぐらいあります。左京図書館は前述しましたが、他にもいくつかの分館は何とか行動範囲になると思います。実は単なる中央図書館より伏見中央図書館の方が冊数が多く、京阪伏見桃山駅から近いので、京阪ユーザーなら利用価値はあります。一方、中央図書館は丸太町七本松、京大からだと自転車で15〜20分程度。レファレンスコーナーもあるのですが所蔵がイマイチで、どちらかと言えば取り寄せの窓口でした。
 これらの京都市の図書館は全てネットワークで相互貸出をしており、カウンターで頼めば他の館から取り寄せてもらえます。ついでに言えば借りた本を返すのも好きな館で構いませんので、中央図書館で借りて左京図書館で返すのもOKです。全ての館を合わせればそれなりの所蔵はありますが、学術書は手薄ですね。

4.3. 京都府立図書館
 先ほどのOPACの件でも少し書きましたが、市立に何かを吸われたかのようにあまり使えないのです……。一応場所は岡崎、平安神宮のそばになります。

4.4. 大阪市立図書館
 大阪は各区ごとに図書館がありますが、実際に使うのは中央図書館ぐらいでしょう。電車の駅で言えば地下鉄長堀鶴見緑地線・千日前線の西長堀駅。駅から徒歩1分、ていうか地下鉄の出口から直接図書館に入れます。大阪市立ですが誰でも借りられるのはちょっとすごいかも。
 で、蔵書に関しては関西の公立図書館では最強。学術書の所蔵も意外とあり、大学図書館で見つからないような本がひょっこりここの書庫に眠っていたりします。難点はたった一つ、遠いことだけでしょうか(苦笑)。
 京都と同じように他館で返せますがあまり意味はないでしょうね。一応京橋駅から徒歩圏内にあるので地下鉄分の電車代は節約できますが。

4.5. 大阪府立図書館
 大阪の府立図書館は本館と中之島図書館がありますが、図書があるのはほとんど本館で、中之島図書館は雑誌や貴重書などの資料中心。相互利用できます。
 ただ、本館の方は交通不便(近鉄東大阪線荒本駅)なので未訪問。
 中之島図書館の方は京阪淀屋橋駅を出てすぐ。ちょっと御堂筋側からは目立ちませんが、戦前の凝った建物でちょっとびっくりします(……でも、手狭w)。市立図書館同様、大学にない雑誌がひょっこり所蔵にあったりするので侮れません。
 ま、淀屋橋からの散歩がてらにどうでしょうか。ぇー。

5.一般的なコツ。

5.1.とにかく新しい文献を探してみる。

 これは単純な話で、文献が新しくなればなるほど注釈や参考文献一覧で出てくる他の文献も新しいですので。そこから孫引きが出来ます。それに加えて、参考文献に挙げられる文献は(その筆者の主観とはいえ)ある程度取捨選択されていることが多いので、逆に先行研究が多いようなジャンルでは自分が読むべき資料の指針にもなります(……まあ、必ずしも筆者の選択が当てになるとは限りませんが)。
 温故知新、古くても読むべき名作は沢山あります。ただ、どうしても最新の知見に反映できないことは否めません(新史料の発見などが代表的ですね)。その辺りを押さえた上で、古い本を読んでいくといいのではと。

5.2.あまり専門的な文献ばかりに傾倒しない。

 レジュメの内容によってはかなり偏った書籍や文献がメインとなることはありますが、やはり時代に対する総合的な視野を忘れてはならないと思うのです。これは自戒。……特に学術論文はどうしても微細なトピックを掘り下げているものが多いですが、こればかり読んでいると大筋が見えなくなる危険があります。

 ミクロな視点とマクロな視点の双方をきちんと持てるか。マクロだけだと単なる歴史好きですし、ミクロだけだと単なるマニアです。双方をきちんと持てて初めて歴史の研究者なんだと思います……ぐさぐさ。何か胸に突き刺さってますが。

5.3.百科事典は意外と便利です。
 論文を読んだりしなくても簡潔にトピックをまとめてありますので、基本的な知識を簡単に仕入れることができます。この点ではやはり辞書的なものの方が圧倒的に有利。レジュメを作るのにも時間制限がありますし、何にでも精通しているほど人間のキャパシティには余裕がありませんので(天才さんって時々いますけどねー)。
 百科事典にも大きく2種類があります。一つは細かい項目で大量にトピックスを建てていくタイプ(Micropaedia、小項目)。もう一つは、項目立ては大きなトピックスに絞られていて、その中でその分野の概説みたいなものが語られるタイプ(Macropaedia、大項目)です。例を出せばブリタニカはこの両方を持ってますね(20巻組の大項目と、6巻組の小項目)。この二つは大抵はきちんと峻別される訳ではありませんが、百科事典によってある程度方針は違っています。この辺りの使い分けが出来れば上級者ですw
 別にそういう総合的なものでなくても、例えば日本史なら国史大事典、日本史大事典、といった具合に各分野の事典があります。こういうものを積極的に活用するのが、特に時間の少ないレジュメ作りの際にはポイントになると思います。

 ネット上には、一般人がどんどん加筆していく形式の百科事典としてWikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)といったものもあります。素人が書いているので記事の信頼性は多少差し引いて考えるべきでしょうけど、普通の百科事典とは違う切り口の変わった記事が見つかったりと面白いのも事実。特に最初の大雑把なイメージや指針作りには非常に便利です。直接の出典とするのは避けるべきでしょうけど。

5.4.無理はしない。
 まぁ最初から色々と出来るわけもないですので、少しずつ色々と技術を身につけていけば良いと思うのです。結局、資料探しにもちょっとした要領があります。慣れてくると、ああ、この辺をまず探してみるのがいいかな、とかそういう感覚が出来てきます。……ちなみに長々と書いてる私は3回生のゼミで初めて発表する機会があったのですが(歴研に来たのはもっと後です^^;)、論文とかを使えるようになったのは4回生も後期に差し掛かった頃でした。最初は新書1冊とかそういう所からスタートしてもいいので、とにかく発表を経験してみることと思います。

 長々と書きましたが、まあ最初は手探りでやることだと思います。そのうち徐々に分かってきます。私も多分分かってないですけどね(苦笑)。
 どうか何らかの参考になりますように。

補足1:孫引きについて
 「【孫引】他の書に引用されたものを原拠にさかのぼって調べることなく、そのまま引用すること。」(『広辞苑』より引用)
 この行為は、学術論文においては(一般化した説を除いて)きちんと典拠を示さないと剽窃と見なされかねません。また、理解の不徹底や誤謬の蔓延を招く恐れがあります。注意が必要です。
(田中愛子)

補足2:東洋學文獻類目等文献目録について
 文献目録がその有益性を発揮するのは、学術論文を作成する際の先行研究調査においてです。学術論文においては、たとえ剽窃でなくとも、既に論じられたことを論じることは無意味であると見なされます。そこで、課題に関連する基本的に全ての論文を調査し、自分が論じようとしていることは既に論じられたことではないかどうかを確かめるのです。
 なお、この手合いのデータには、電子化されたものも存在するものの、それがいまいち使い物にならないということも少なからずあるので要注意です。
(田中愛子)


参考資料に戻る

inserted by FC2 system